
こんにちは、株式会社スイコーの澤口(一級建築士、宅地建物取引士、Affiliated Financial Planner)です。
今日は天皇誕生日、3連休最終日ですね。昨日はとても暖かい1日でした。天気予報では仙台の今日は最高気温15℃です。2月とは思えない気候で助かります。ただ、昨日は黄砂がかなり舞っていたみたいなので洗濯物を外に干すのは注意ですね。さて、相続した実家を売ろうとしたら「前面道路が狭すぎて、新しい家が建てられない(再建築不可)」と言われてしまった…。そんな土地でも、セットバックや法的な許可申請を行うことで、建築可能な土地に生まれ変わらせる方法があります。一級建築士が教える、難あり物件の救済策。
「再建築不可」と宣告されても諦めないで。
狭い道路の実家を「売れる土地」に変える建築士の裏技
1. 不動産会社に「この土地は価値がゼロです」と言われた日
仙台市内の古い住宅地には、車がすれ違えない細い路地が今も残っています。
そこで長年暮らしてきた実家を相続し、売却しようとして不動産会社に相談したら、
「再建築不可です。価値はほぼありません」
こう言われてしまう。落ち込むのは当然です。
建て替えができないと、買主は住宅ローンを使いにくくなります。
現金で買える人に限られ、話が一気に不利になる。結果として「安く買い叩かれる」流れになりやすいのです。
ただ、ここで終わりではありません。
一級建築士として現場を見ていると、再建築不可と言われた土地でも、調査と手続きを重ねることで「建て替え可能な土地」として整理できるケースがあります。諦める前に、道路と敷地の事実関係を確認してほしいのです。
2. なぜ建てられない?「幅員4m」と「接道2m」の鉄の掟
建て替え可否を左右するのが、建築基準法の接道義務です。原則として、敷地は「建築基準法上の道路」に2m以上接していないと建物を建てられません。さらに、その道路は原則として幅が4m以上必要です。これは消防車や救急車が入れるようにするための防災ルールです。
ここでよく出る疑問がこれです。
「今の家は建っているのに、どうして建て替えができないのですか?」
昔は基準が違ったり、昔からの道が法律上の道路として整理されていなかったりします。そのため、今ある建物は成立しているのに、同じ場所で新築や建て替えができない状態が起きます。
もう一つ大事な点があります。
現地の道が「法律上の道路に当たるかどうか」は、見た目だけでは判断できません。名称が道路でも、法律上の道路ではないことがあります。逆に、細い道でも法律上の道路として扱える仕組みもあります。
次章から、その救済策を2つ紹介します。
3. 救済策①:自分の土地を道路にする「セットバック」とは
細い道でも、一定の条件を満たせば「将来4mの道路に広げていく前提の道」として扱えることがあります。このときに必要になるのがセットバックです。
セットバックは、敷地を少し後退させて、将来の道路幅を確保する考え方です。一般的なイメージはこうです。
・道の中心から左右に2mずつ取ったラインが、将来の道路境界になる
・そのラインより道路側に出ている部分は、建物や塀を置けなくなる
・代わりに、建て替えができる可能性が出てくる
救済策「セットバック」の仕組み
敷地は少し減るが、建て替えが可能になる魔法
【補足】
セットバックは必ずしも「中心線から2mずつ」とは限りません。
反対側が川、崖、擁壁、線路などで後退できない場合、片側だけで4mを確保する形になることがあります。現場では「片側後退」と呼ばれることが多いです。道路の形状によって後退の考え方が変わるため、机上の計算だけで決めつけないことが大切です。
「自分の土地を差し出すなんて損では?」
その気持ちはよく分かります。
ただ、再建築不可が外れることの価値は非常に大きいです。売却の土俵に上がれるかどうかが変わります。
4. 救済策②:建築審査会の許可をもらう「43条但し書き(許可)」
セットバックができない土地もあります。典型例は袋地です。道路に出る通路が細い、後退しても2m接道が確保できない。こういう場合に検討するのが、いわゆる「43条但し書き」と呼ばれてきた許可ルートです。
ここは表現を正確にしておきます。
許可を出す主体は「建築審査会」ではなく、行政側の「特定行政庁」です。実務では、特定行政庁が許可を行い、その過程で建築審査会の同意が必要になるケースが多い、という理解が正確です。
仕組みを分かりやすく言うとこうなります。
・道路に2m接していなくても
・通路幅や空地など、避難や安全が確保できる条件を満たし
・行政の許可を得られれば
建て替えが認められることがある
私はこれを「最後の切り札」として扱います。万能ではありません。通路の状態、権利関係、周囲の空地、将来の安全性など、条件を満たす必要があります。それでも、セットバックすら無理と断られた土地に突破口が見つかることがあります。
5. 【成功例】他社で断られた土地が、調査によって相場で売れた話
仙台市内の細い路地に面した実家。
他社では「再建築不可なので買取しか無理」と言われ、所有者さまは相当落ち込んでいました。
私たちが最初にやったのは、売り出し方の工夫ではありません。敷地調査です。
・法的に道路として扱える道かどうかの確認
・幅員、中心線、後退線の整理
・必要なら狭あい道路に関する協議の段取り確認
・役所の担当課と、建て替えに向けた手順の確認
この積み上げによって、「どうすれば建て替え可能になるか」を説明できる状態に近づきます。
不動産は、不安が価格を下げます。
不安を減らす材料がそろうと、買主の見方が変わります。
その結果として、極端な買い叩きではなく、一般の宅地に近い水準で検討してもらえるケースが出てきます。誰にでも同じ結果を保証できる話ではありませんが、調査で評価が改善する土地は現実にあります。
使える?「損益通算」の適用条件
全員共通の「関門」と、2つの「コース」
所有期間が5年超であること
-
✔ 新居にローンがある
(10年以上) - ✔ 新居の床面積50㎡以上
-
✔ 旧居にローンが残る
(10年以上) - ✔ 売値 < ローン残高
6. セットバックすると「敷地面積」が減る?建ぺい率への影響
ここはデメリットも正直にお伝えします。
セットバックした部分は、所有権が消えるわけではないことが多いです。見た目としては自分の土地のままです。
ただし、建築のルール上は「道路として扱う部分」になるため、建ぺい率・容積率を計算する敷地面積から外れるのが基本です。
結果として起きやすいことは次の通りです。
・敷地面積が小さく扱われる
・建てられる建物の面積が少し小さくなる可能性がある
・塀や門、植栽の移設や撤去が必要になることがある
それでも、再建築不可が解消されるメリットと天秤にかけると、前に進める価値が大きいことが多いです。ここは土地ごとに計算し、現実的なプランに落とします。
7. まとめ:道路のことは不動産屋ではなく「建築士」に聞け
再建築不可の相談で一番もったいないのは、「最初に言われた一言」で結論を決めてしまうことです。道路は、見た目では判断できません。役所資料と現況を突き合わせ、手続きまで含めて整理して初めて答えが出ます。
不動産営業だけでは、役所との技術的な話が噛み合わないことがあります。
建築士が入ると、道路・建築・法規の観点で、突破口を探せる可能性が上がります。
落ち込むのは、調べ切ってからで十分です。
実家の価値は、書類と現場で変わることがあります。
お好みの方法でご相談ください。
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よくある質問(Q&A)
Q1:セットバック費用は誰が出すのですか?
基本は所有者負担になることが多いです。測量、杭の設置、塀や門の移設・撤去などが絡むためです。
一方で「支援」という意味では、論点がいくつかに分かれます。
・後退部分が公共の用に供する道路として扱われる場合、固定資産税などが非課税になる可能性があります
・危険なブロック塀の撤去は、条件が合えば補助制度の対象になることがあります
セットバックそのものの費用を一律に補助してもらえる、と断定はできません。制度は年度や場所、要件で変わるため、個別確認が必要です。
Q2:隣の家がセットバックしていませんが?
セットバックは「建て替えなどのタイミングで表に出る」性格のものです。隣が昔のままでも、ご自分が建て替えをする段階で後退が必要になることがあります。時期がずれるのは珍しくありません。
Q3:私道(私有地)でも大丈夫ですか?
大丈夫なケースもあります。
ただし重要なのは権利関係です。
・私道や通路の所有者が誰か
・通行や掘削の承諾が取れるか
・将来トラブルにならない合意の形を作れるか
ここが整わないと、セットバックも許可申請も前に進みません。私道絡みは、法律と現場と人間関係がセットです。早い段階で整理するほど、打てる手が増えます。
この記事を書いた人
澤口 司 株式会社スイコー 代表取締役
一級建築士・宅地建物取引士・Affiliated Financial Planner。「建築」と「不動産」の両面から、資産価値を守る提案。複雑な相続問題も、プロの知見でシンプルに解決へと導きます。
