
実家じまいで揉める
外構処分の真実
1. 建物よりも「庭」が高い?見積もりを見て絶句したAさんの事例
仙台市内で昭和の立派な日本家屋をお持ちのAさんから、実家じまいの相談を受けました。
玄関までの飛び石、剪定が行き届いた庭木、来客に「立派なお庭ですね」と言われる大きな庭石。
旧家らしい品格がありました。
Aさんは、木造解体の坪単価を調べており、建物本体の解体費は想定の範囲内でした。
ところが、見積書の中盤にある付帯工事費の欄を見て言葉を失います。
- ブロック塀撤去
- 庭木伐採
- 抜根
- 庭石の搬出と処分
- 整地
- 残置物処分
この付帯工事費が、建物本体に迫る金額になっていたのです。体感として、庭石と抜根が重なると、合計が100万円単位で動くことがあります。
ここで押さえておきたいのは、家屋の解体費用と外構の撤去費用は、同じ見積書に載っていても別物だという点です。建物は坪単価で目安が出ますが、外構は量と状態で大きく振れます。立派な庭ほど、撤去費用が高くなる皮肉が起きます。
2. なぜ「庭石」は嫌われるのか。重機も壊れる厄介者
庭石は見た目が上品でも、現場では扱いが厄介です。理由は重さと硬さに尽きます。
小ぶりに見える石でも、石は密度が高く驚くほど重いです。人力では動かせず、ユンボで吊って、ユニック車などで積み込み、運搬車両も選びます。搬出経路が狭いと、作業そのものが難しくなります。
さらに処分が悩ましい。庭石は、撤去工事で発生するため、実務上は産業廃棄物として取り扱われ、処理施設の受入区分に従って搬入します。ここが重要で、区分や受入条件は処理施設ごとに違います。自然石として扱われる場合もあれば、性状や混入物、サイズによっては受入に条件が付くこともあります。
料金は重量単位で計算されることが多く、石は重いので金額が伸びやすい。大きすぎる石や、土やモルタルが多く付着した石は、受入を渋られたり、別途の手間賃が上乗せされるケースもあります。
現場で重機トラブルが起きやすい点も見逃せません。無理に割る、こじる、吊る。ここで刃が傷む、油圧に負荷がかかる、最悪の場合は機械の故障につながる。解体業者が庭石を嫌がるのは、採算だけでなくリスク管理の意味も大きいのです。
3. 「誰かタダで貰ってくれませんか?」が通用しない現実
Aさんも最初はこう言いました。立派な石だから欲しい人がいるはず。タダでいいから持っていってもらえないか。
お気持ちは分かります。昔は庭石に価値がありました。庭づくりが家の格を表す時代があったのも事実です。
ただ、今は住宅の価値観が変わりました。手入れの手間を減らしたい方が増え、庭石を置く家は減っています。もらった側が困るのは運搬と将来の処分です。
- 運べない
- 置く場所がない
- いずれ処分が高い
こうして引き取り手が見つからず、タダで引き取ってもらう発想が成立しにくくなっています。現実には、処分料を払って持っていってもらう話になることが多いです。親世代は価値と思い、子世代は負担と感じる。実家じまいで揉めやすい典型パターンです。
4. 【要注意】昔のブロック塀、基礎がL字で地中深くまである問題
外構の費用を押し上げるのは庭石だけではありません。古いブロック塀も要注意です。
昭和期の施工では、地中にしっかりした基礎が入っていることがあります。よくあるのがL字状に張り出した基礎で、地面の下に想像以上のコンクリートが眠っています。地上に見えるブロックが1メートルでも、地中の基礎が深く、撤去範囲が広くなると、掘削、搬出、処分、埋め戻し、転圧まで一式になります。
樹木も同様です。伐採だけなら比較的読みやすいのですが、抜根が加わると話が変わります。根は地中で広がり、基礎と絡み、石と絡みます。
ここも現実をお伝えします。更地渡しで売る、または新築や外構のやり替えを予定している場合、根を地中に残すと工事の障害になりやすいです。基礎工事の掘削で引っかかる、配管ルートの邪魔になる、腐朽で沈下の原因になる。こうしたトラブルを避けるには、抜根まで含めて撤去する計画が安全です。
【要注意】地中に潜む「費用の塊」
昔のブロック塀と庭木が解体費を上げる理由
5. 悪徳業者の手口。「埋めてしまえば分からない」の甘い罠
ここは強く警告します。敷地内への埋め戻しで処分費を浮かせるのは絶対にやってはいけません。
安くします
石や瓦は埋めて均せば分からない
この手の提案が出たら、その業者とは距離を置くべきです。撤去した石やコンクリート片、瓦などを地中に埋設して整地する行為は、不法投棄とみなされるリスクがあります。法律面だけでなく、売却時の事故につながります。
後になって買主が新築工事で掘ったら、地中からガラが出てくる。そこで発覚します。追加の撤去費用が発生し、契約不適合として損害賠償の話になることもあります。目先の数十万円を削った結果、後で何倍にも膨らむ。実家じまいで一番避けたい落とし穴です。
6. 解体費用を安くするテクニック。造園業者との相見積もり
費用を抑える方法はあります。鍵は、解体業者に庭まで丸投げする前に、庭だけ専門業者にも見せることです。
造園業者は、庭石や抜根に向いた機材と段取りを持っています。ユニック車、吊り具、搬出の経験。解体業者の得意分野は建物、造園業者の得意分野は庭です。分けて発注した方が安くなるケースがあります。
おすすめの手順は以下です。
- 解体業者から見積もりを取る
- 同じ現場を造園業者にも見せ、庭木伐採、抜根、庭石撤去だけ相見積もりを取る
- 金額だけでなく、処理先の区分や受入条件、運搬方法を確認する
- 工程を調整し、全体として一番合理的な組み合わせにする
注意点は工程管理です。庭の撤去が先行する場合、建物解体と干渉しないよう段取りが必要になります。ここは不動産と工事の両方を分かっている窓口がいると、近隣対応も含めてスムーズです。
7. まとめ:更地渡し契約の前に、必ず「石」の行方を確認して
売買契約が更地渡しになると、庭石も根も塀の基礎も残せません。池や飛び石、古いコンクリート平板も含めて、更地として引き渡す責任が生じます。
建物の坪単価だけで総額を決め打ちしないこと。見積もりの付帯工事費を項目ごとに分解し、現場を見て数量を確認すること。庭石がどの区分でどこへ搬入されるのか、サイズで受入条件が変わらないか。根はどこまで抜くのか。塀の基礎はどこまで撤去するのか。契約前にここを固めると、家族の話し合いも現実に沿って進みます。
立派な庭を大切にしてきた方ほど、処分費の現実はつらいものです。だからこそ早い段階で数字を出し、やり方を選ぶ。これが実家じまいを揉めさせない現実的な進め方です。
お好みの方法でご相談ください。
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よくある質問(Q&A)
Q1:庭の木は自分で切ってもいいですか?
A:枝葉を細かくして自治体のルールに沿って出せる範囲は節約になります。太い幹や大量の処分は作業量も安全面も負担が大きいです。抜根は重機がないと難しく、売却で更地渡しになる場合や新築予定がある場合は、根を残すと工事の支障になりやすいので、抜根は業者に任せるのが安全です。
Q2:池があるのですが?
A:池は水抜き、底の泥や堆積物の処分、構造物撤去が絡みます。埋め戻しも沈下を防ぐ締め固めが必要で、水が溜まらない配慮が求められます。地域やご家庭によっては、手順や風習への配慮を重視されることもあります。工事の段取りだけでなく、進め方も含めて相談するのが安心です。
この記事を書いた人
澤口 司 株式会社スイコー 代表取締役
一級建築士・宅地建物取引士・Affiliated Financial Planner。「建築」と「不動産」の両面から、資産価値を守る提案。複雑な相続問題も、プロの知見でシンプルに解決へと導きます。
