
「親が認知症になったら家を売って施設代に」は甘い?
実家の資産凍結を防ぐ唯一の方法
物語:繰り返される同じ話に感じた「違和感」
久しぶりに帰省して、実家の玄関を開けた瞬間はホッとします。
ところが、週末に片付けを手伝っていると、ふと現実が見えてくるんです。
冷蔵庫の奥から、賞味期限が半年以上前の食品が出てくる。
同じ話を、同じ順番で、今日だけで三回目。
「さっきも言ったよ」と言いかけて、飲み込む。
そのとき頭をよぎるのが、こんな考えです。
もし介護が必要になったら、この家を売ってお金を作ればいい。
施設代は、実家の資産で何とかなるはず。
…実はこれ、かなりの確率で“思った通りにいきません”。
脅すつもりはありません。
事実として、認知症と不動産は相性が悪すぎるんです。
問題:法律の壁。「意思能力」がないと不動産の売買契約は無効になる
不動産の売却は、印鑑と書類が揃えば終わり、ではありません。
一番大事なのは「本人が売ると理解して、売る意思で契約しているか」です。
法律上、意思能力がない状態で行った法律行為は無効になります。
つまり、認知症が進んで「売る意味が分からない」状態だと、売買契約そのものが成立しません。
ここで家族がよく誤解するのが、
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子どもが代わりに売ればいい
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施設費用なんだから家族が決めていい
という発想です。
残念ながら、子どもであっても、勝手に代理で売れません。
委任状も、本人が内容を理解して作れなければ、同じ壁にぶつかります。
結果として起きるのが、いわゆる「資産凍結」です。
実家も動かせない、預金も動かしにくい。介護の資金だけが先に必要になる。これが現場で本当に増えています。
背景:救世主ではない?「成年後見制度」の意外と重いデメリット
「後見を付ければ売れる」と思われがちですが、成年後見は“本人を守る制度”で、家族が自由に動かせる仕組みではありません。
注意点は3つです。
① 報酬が、月額の目安で継続的に発生し得る(家庭裁判所が報酬を定めます)。
② 親の居住用不動産の売却は家庭裁判所の許可が必要で、許可なしは無効です。
③ 制度の目的はあくまで本人の保護・支援で、家族の都合が優先される制度ではありません。
しかも後見は、本人が回復して取り消されるか、亡くなるまで続くのが原則です。
失敗例・リスク:施設に入りたいのにお金がない。
実際に起こる“つらい流れ”は、だいたいこうです。
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親の物忘れが進む
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施設を検討するが、入居一時金や月額費用が必要
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「家を売ればいい」と思う
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でも、契約に必要な意思能力が確認できない
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成年後見を検討 → 申立て、審理、選任…で時間がかかる
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その間の施設費用を、子どもが立て替え続ける
一番きついのは、親のために動いているのに、家族の生活が削られていくことです。
子ども世代にも住宅ローンや教育費があります。立て替えが続くと、共倒れになりかねません。
「家があるのに、お金がない」
これが、塩漬け資産の怖さです。
成功するためのポイント:「家族信託」で親の財産を守り、活用する
結論から言います。
認知症による資産凍結を“実務上もっとも確実に避ける方法”が、家族信託です。
家族信託は、ざっくり言うと、
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親(委託者)が元気なうちに
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信頼できる家族(受託者)に
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不動産や預金の管理・処分の権限を託す契約
です。
家族信託の強み(不動産目線)
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認知症になっても、受託者が売却などの手続きを進められる
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「施設費用のために売る」「住み替えのために売る」など、目的に沿って動ける
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後見のように、原則ずっと毎月報酬が発生する仕組みではない(※専門家支援は別途)
公証人側も、家族信託(民事信託)が増えていることや、公正証書での作成状況について言及しています。
もちろん、家族信託にも注意点はあります。
受託者の責任が重い、設計を間違えると逆に揉める、などです。だからこそ、「とりあえずネットの雛形」だけで進めるのはおすすめしません。
仙台の公証役場はどこ?手続きの流れと費用の目安
家族信託は「公正証書」で作るケースが多いです(金融機関や登記実務で求められやすい)。
仙台でまず押さえる公証役場の一つが、仙台一番町公証役場です。
- 所在地:仙台市青葉区一番町2丁目2-13 仙建ビル6階
- 電話:022-224-6148
手続きの大まかな流れ
- 家族会議(何のために、誰が受託者か、売却の条件はどうするか)
- 司法書士等と信託設計(不動産・預金・税務も含めて)
- 公証役場で公正証書化
- 信託登記(不動産がある場合)
- 信託口口座の準備(必要に応じて)
- 費用の目安(“公証役場に払う部分”)
信託の公正証書手数料は、信託財産の価額で決まる部分に加え、信託は加算(例:信託財産1億円以下なら1万3000円加算)があるとされています。
※ここに、司法書士・弁護士等の報酬、登記費用、書類取得費などが加わります。案件ごとの差が大きいので、私は「最初に見積もりを取って全体像を掴む」ことを強くおすすめします。
まとめ:実家は「ある」のに「使えない」資産になり得ます
親御さんの物忘れが増えたとき、私たち子ども世代がつい考えるのが
「いざとなったら実家を売って、施設費用に充てればいい」という段取りです。
ただ現実は、認知症が進むと“売る意思の確認”ができず、売却が止まることがあります。
成年後見制度で動かせるケースもありますが、家裁の許可や手続き、継続的な負担が発生し、思ったほど自由には動けません。
だからこそ大事なのは、怖がることではなく、“元気なうちに段取りを作っておく”ことです。
段取りさえ先に作っておけば、介護が始まっても、家族の負担が一気にのしかかる確率は下げられます。
① まずは「実家がいくらで売れそうか」を把握したい方へ(3分)
不安の正体は「見えないこと」です。
先に数字を把握すると、家族会議が一気に進みます。
- まずは相場感を掴む
- 必要資金(施設費用)とのギャップを把握する
- 家族で共有しやすい形にする
▼ SelFinで“実家の目安”を確認して、結果を保存する(無料)
② もう「家族で話すのがしんどい」「揉めそう」な方へ(最短)
不動産・介護・家族の話は、当事者だけで整理しようとすると、だいたい止まります。
私たちは不動産会社ですが、売る/売らないの前に、家族が合意できる段取りを一緒に作ります。
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実家を売るべきか、残すべきか
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売るなら「いつまでに・いくら必要か」
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信託/後見など、どの枠組みが合うか
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司法書士等と連携して、必要なら次の手続きへ
お好みの方法でご相談ください。
受付時間:10:00~12:00、13:00~17:30(定休日:水曜日)
よくある質問
質問1:軽い物忘れ程度ならまだ間に合いますか?
多くの場合、間に合います。ポイントは「診断名」よりも、契約内容を理解して意思表示できるかです。少しでも不安があるなら、先送りせず動いてください。
質問2:成年後見人を家族にすることはできますか?
できます。ただし必ず家族が選ばれるとは限りませんし、居住用不動産の処分には家庭裁判所の許可が必要で、許可なしは無効です。
質問3:家族信託の費用はどれくらいかかりますか?
信託財産の内容と設計次第で幅があります。公証役場手数料は財産額に連動し、信託は加算があるとされています。まずは「何を信託に入れるか(不動産だけか、預金もか)」を整理し、専門家と一緒に総額の見積もりを出すのが確実です。
この記事を書いた人
澤口 司 株式会社スイコー 代表取締役
一級建築士・宅地建物取引士・Affiliated Financial Planner。「建築」と「不動産」の両面から、資産価値を守る提案。複雑な相続問題も、プロの知見でシンプルに解決へと導きます。
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